「……観察のついで、だがな。君の体調が整うまでは、ここにいてもらおう。それだけだ」

「ありがとう。えっと、あの……」

 言いかけて、ふと気づく。
 リュミは、男の名前すら知らないのだ。

 もじもじしながら見つめると、男は渋々といった様子で名乗った。

「……エルドだ」

「ありがとう、エルドさん」

「……ふむ」

 パッロは嬉しそうにリュミの周りをぐるぐると歩き回る。
 エルドは再び難しい顔で腕を組み、ぶつぶつと考察を再開した。偏屈で、研究者然とした態度が際立っている。

「……なるほど……面白い。観察すべき項目が山ほどあるな……」

 リュミはそんな様子に微笑み、パッロの頬に軽く触れる。


「パッロ……いっしょ……!」

 パッロは短く鳴き、背中を小さく揺らして応える。
 その動きには、たしかな絆の気配があった。

 エルドは偏屈そうに眉をひそめながら、しかし興味を隠しきれない様子で二人を見つめ続けていた。
 その瞳には、尽きぬ疑問と探究心が燃えている。彼の研究心は、今まさに新たな一歩を踏み出そうとしていた。