リンコはちらりとリュミを見て、ふっと表情を緩める。

「……泣いている暇なんてないわよ。さぁ、もうひと暴れするわ!」

 崩れた壁から、小鳥たちが飛び込んでくる。
 その爪には、ピチピチと跳ねる魚――リュミがふわふわにした魚の魔物だ。

「あんたたち、飛べもしないのに来たの?」

 リンコが呆れたように笑う。
 魚たちは返すように、くわっと口を開いた。

 放たれた水弾が放射線を描いて飛び、神官に命中する。
 水が炸裂し、神官は倒れた。

「よし、上出来!」

 リンコがくちばしを鳴らす。

「そのまま援護! 小鳥は高度を下げすぎないで!」

 ツンとした声に、鳥たちがキュルルと鳴いて応える。

「行くぞ!」

 エルドが杖を掲げるとパッロが咆哮し、仲間たちが笑い声のような鳴き声を上げる。
 神官たちは混乱し、力を合わせて立ち向かおうとするが、森の仲間たちの連帯感に押されていった。

 リュミはパッロの背で小さくつぶやく。

「ねぇ、女神さま……リュミ、まちがってなかったよね……?」

 風はその問いに答えるように、彼女の髪をさらさらと撫でた。
 あたたかな光がふわりと広がり、それはまるで森じゅうの「ありがとう」が集まったかのようにやさしく包む。
 リュミは目を閉じて、ぽろりと涙をこぼした。