パッロは床を力強く蹴りつけると、重たい前脚をふるって神官たちを吹き飛ばした。
 その背後から、リンコが羽を広げ、宙を舞う。

「リュミ――っ! お迎えに来たわよ――!!」

 窓という窓から、影がなだれ込んでくる。
 蝶の魔物たちが天井を埋め尽くし、キラキラと光の粉をまき散らした。

 ムスティの仲間の小さな蜘蛛たちが糸を走らせ、逃げ道をふさぎ、モグラの魔物が床を突き破って、神官たちの足元をグラグラにする。

 そして――森の仲間たちが一斉にやってきた。
 イノシシたちは壁を突き破り、キツネは素早く走り抜け、シカは神官たちをぐるぐると追い回し、リスたちは祭具をぐしゃぐしゃにひっくり返す。ウサギたちはリュミのまわりに跳ね集まり、小さな体で彼女を囲むように守る。
 ほんの一瞬のうちに、祭具庫はふわふわたちで埋め尽くされた。

 リュミの目が大きく見開く。
 こぼれそうな涙が、光を受けてキラリと輝いた。

「……みんな……きてくれたの?」

「当たり前だろ。リュミは、オレたちの大事なともだちなんだからな」

 パッロがゆっくりと近づいてくる。
 あたたかくてどこか懐かしいにおい。パッロの体が、そっとリュミを包み込む。

 リュミが見上げると、まっすぐな金の瞳が、やさしく彼女を見つめ返していた。
 もう怖がらなくていいんだよ――そう言ってくれているようだった。

「このっ、リュミいじめの変態神官どもっ!」

 リンコがくちばしで神官の帽子をくわえ、高く放り投げる。
 それは天井にぶつかって、くるくると落ちてきた。