神官たちはただ静かに淡々と――しかし執拗に、リュミを祈らせようとしてくる。

 その顔に怒りはなかった。怒鳴るでも、睨むでもない。
 ただ感情のない目で、リュミを見下ろしている。

 それが、なにより怖い。

 わけがわからない。
 リュミが嫌だと言っているのに。できないと言っているのに。

 怒っているならまだいい。泣きたいほど怖い顔なら、逃げたくなるだけで済む。
 でも、怒ってもいないのに怖いことをしてくる大人たちが――一番、怖い。

 どうしてそんな目で見るの?
 どうして無理やり祈らせようとするの?

 わからない。全然わからない。

(どうして? どうしてなの?)

 理由がわからないから、もっと怖い。
 頭がぐるぐるして、胸がぎゅっと苦しくなる。

「女神の命に、逆らうことはできません」

 女神の願いは、森を守ることだ。
 瘴気を溜め込んだ魔物をふわふわにして、やさしい気持ちに戻してあげる――それがリュミの力のはず。

「あなたの手で救うのです。これまでそうしてきたように」