リュミはじっと窓のほうを見つめる。
わずかな隙間から、光がちらちらと差し込んでいた。
(……ねぇ、女神さま。リュミ、まちがってないよね? 森が好きで、みんなが好きで、こわいのをふわふわにするのがいけないことなの? どうしてこんなことになっちゃったの……?)
そのときだった。
ムスティがそろりと身を起こし、まるで空気のように音も立てず、窓の隅に忍び寄る。
体をまるで紙のように薄くして――するりと、外へ抜け出した。
リュミはまだ気づかない。
閉じたまぶたの奥で、女神に向かって小さな祈りを続けていた。
馬車の外壁にぴたりと張りついたムスティが、風に吹かれながらもじっと耐えている。
そして、金色の糸をそっと、少しずつゆっくりと引き始めた。
細く、先生で、けれど切れないように紡がれた糸。
それは枝から枝へ、木から木へと伸びていく。
陽光を受けて、キラキラと光る一本の糸。
まるで、それは、リュミへと続く道しるべ。
きっと、誰かが見つけてくれるように。
きっと、大切なあの子たちが駆けつけてくれるように――。
やがて、窓の外に淡い光が差し込んだ。
リュミはその光に気づき、そっと顔を上げた。
(……ひかってる?)



