魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


「人が……たおれてるって、本当?」

 リュミが問いかけると、男の子は強く頷いた。

「うん、ぜんぜん動かないの!」

 リュミの顔が、さっと真剣なものへと変わる。

「わかった。どこで見たの? 案内して!」

 男の子は「こっち!」と叫ぶように言って、すぐに駆け出した。
 リュミもそのあとを追おうとした、そのとき。

「ぼくも行く!」

「わたしも見に行くー!」

 何人かの子どもたちが、不安そうに、あるいは好奇心いっぱいの顔で走り出そうとする。
 けれど、 リュミは振り返って、まっすぐに声を張った。

「だめ! ここで待ってて!」

 その言葉に、子どもたちの足がぴたりと止まる。
 驚いたように見上げてくる子もいたけれど、リュミは真剣な目で続ける。

「もしかしたら、危ないかもしれない。だから……パッロとリンコと一緒に、ここで待ってて」

 胸元のムスティが、ぎゅっとリュミにしがみついている。
 その姿を確認するように見てから、パッロが低くうなった。
 そのうなり声は、まるで「ここは任せておけ」と言っているようだった。

 リンコは一度空へと舞い上がり、くるりとリュミの頭上を旋回したあと、子どもたちの中心にふわりと舞い降りる。
 その鋭い視線は、「ちょっとでもふざけたら、許さないからね」と語っているようだった。

 子どもたちは少し不満そうな顔を見せながらも、おとなしくその場に残った。