魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


 パッロが静かに立ち上がり、リュミの前に出る。
 背中の毛を逆立てて、喉の奥で低くうなった。

 リンコは翼を広げて威嚇の構えを取り、ムスティはリュミの肩にするりとよじ登る。
 エルドの杖に、光が灯った。

「これ以上、無礼を働くなら――」

「だめ!」

 リュミが思わず声を上げた。
 エルドの腕をぎゅっと掴み、真剣な目で見上げる。

「ここで戦うのはだめ……。誰も、ケガしてほしくないもん」

 その言葉に、重い沈黙が落ちた。
 春風が枝葉を揺らし、こもれびが揺れ動く。

 エルドは小さく息を吐き、杖をゆっくりと下ろした。

「……リュミがそう言うなら」

 神官はその様子を静かに見つめていた。
 そして淡々と、けれど丁寧に言葉を重ねる。

「大神殿としては、強制はしません。ただ……あなたの力を正しく調べる機会を――」

「リュミを大神殿に連れていくつもりか?」

 エルドがぴしゃりと遮った。
 神官は微笑を浮かべるが、その笑みに温度はない。

「ええ。王都の大神殿には古の聖具と記録があります。真実を知るには、そこが最も適しているのです」