「《ふわふわ》してほしいんだろう」

 パッロが、どこかおかしそうに鼻を鳴らした。
 リンコはむっとしたように羽をバサバサ広げて、文句を言う。

「まったく、どいつもこいつも。《ふわふわ》なんて口実で、リュミと遊びたいだけじゃないの?」

「そんなことないよ、リンコ。ね?」

 リュミがにっこり微笑むと、魔物たちは「ギッ」と短く鳴いた。まるで、そうだそうだと同意しているかのように。

「……じゃあ、《ふわふわ》してみようか」

 リュミはそっとしゃがみ込み、やさしく両手を広げた。
 その手のひらから、あたたかな光が静かに生まれる。
 金色の粒子がふわふわと舞い上がり、魔物たちを包み込む。

 モグラの魔物たちはうっとりと目を細め、やがて満ち足りたように小さく体を震わせて、ゆっくりと森の奥へと帰っていった。

「……きれいだな」

 パッロの声が、胸に染み入るように静かに響いた。
 リンコはわざとらしく小さく咳払いをして、「ま、悪くないわね」とそっぽを向く。
 草の上を歩いていたムスティが、器用に枝へと糸を伸ばしながら、ぽつりとつぶやいた。

「……安心、してる。みんな」

「うん。森が……喜んでるみたい」

 その様子を、少し離れた木陰で見ていたエルドが、口の端を上げた。

「まったく。おまえが来てから、森の魔物どもが増えた気がするぞ」