ムスティは音もなくリュミの足元に来て、そっと頭を押し当てる。
 小さいけれど、たしかな主張だ。

 リュミはぱちりとまばたきをして、さんにんの顔を順に見つめる。

「……どうしたの? ピクニック、たのしくない?」

 その問いかけに、さんにんは一瞬、気まずそうに視線を逸らした。
 パッロは照れくさそうに耳を動かしながら言う。

「そ、それは……違う。楽しいに決まってる。だけど、なんというか……ちょっと、な」

「なんでもないのよっ」

 リンコが早口で割って入り、視線を合わせようとせず枝の先を見つめる。
 ムスティは編みかけのショールをきゅっと握りしめたあと、小さな声でつぶやいた。

「僕たち……ちょっと、悔しいだけ」

 その言葉に、リュミはぽかんと口を開けた。
 でもすぐにふわりと笑って、両頬を赤く染める。

「そっか……ごめんね。気づかなかった。みんなのこと、大事に思ってるよ。とっても」

 素直でまっすぐな言葉に、さんにんの顔がふっとやわらぐ。
 エルドは遠くで見守りつつ、控えめに首を振った。

「まるで、年頃のきょうだいみたいだな……」

 森の静けさに、やさしい笑い声が交じる。
 そのときだった。

 草地の端にある茂みが、ざわりと揺れる。
 風ではない、明らかに誰かの気配。