穏やかな時間が、静かに過ぎていく。
 しばらくすると、森のあちこちから、獣や魔物たちが姿を現し始めた。

 大きな角を持つシカ。
 頭に花冠をのせたキツネ。
 美しい青い羽根を広げる鳥たち。

 どの生き物も、リュミのまわりにそっと寄ってきて、まるで仲間だというように体をすり寄せてくる。
 気づけばリュミは、ふわふわとしたあたたかい海に埋もれていた。

「ひゃっ……ま、待って、苦しい〜!」

 その光景を少し離れた場所から見つめていたパッロたちさんにんは、なんとも言えない顔をしていた。

「……あいつら、なにしに来たんだ」

「リュミってば、モテモテ……」

「……僕も、ぎゅってしてほしい」

 嫉妬と呆れと、ほんの少しの寂しさが入り混じったような表情。
 そこへ、木の陰からひょいと姿を現したのは――エルド。彼は口元を緩めて笑った。

「おいおい、おまえらまで張り合うな。リュミは鈍いんだから、気づきもしないぞ」

 その言葉に、リンコがぷくーっと頬を膨らませた。

「鈍いとかそういう問題じゃないわよ!」

 パッロとムスティも、どこかむくれたような顔で続く。

「あれはズルい」

「……同意」