エルドは鼻で笑ったけれど、その声には棘がなかった。
リュミは少し考えてから、小さく口を開く。
「みんないやしの力を持ってて、すごいって言われてたけど……リュミには、なかったの」
「……それで、追い出されたのか」
「リュミが、自分で出てきたの」
「……そうか」
それ以上、エルドはなにも言わなかった。
ただ、森の静けさの中で、足音だけがやさしく響く。
空は夕暮れの色に染まり始め、森の影が少しずつ長くなる。
「むかし、王城の禁書庫で読んだことがある」
静けさを破るように、エルドがまた話始めた。
「フォルステアは、女神の祝福を宿す森の守り手だと」
「うん。古龍さんもそう言ってた」
リュミの声は、どこか誇らしげだった。
「ああ。おまえの一族は、代々このヴィルダの森を守ってきた。見返りとして、森は癒やしの力を与えた。だがそれは、ごほうびじゃない。あくまで、見返りだ」
「もらえるものじゃないの?」
リュミの質問に、エルドは前を向いたまま、静かに頷いた。
「そう。ほしがって得られるようなものじゃない」



