魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


「ねぇ……見て。芽が、出てる」

 リュミが足を止めて、小さな声でつぶやいた。
 エルドも立ち止まり、その芽を見つめる。しばらく無言のまま、じっとそこに立っていた。

「……古龍は、最後まで森を守っていたのだな」

「うん。瘴気を吸って、みんなを守ってくれてたんだよ」

 リュミはそっと両手を胸に当てて、目を閉じる。

「痛かったと思う。苦しかったと思う。でも……それでも、守りたかったんだね……」

 風がふわりと吹き抜け、リュミの髪が静かに揺れた。
 そのやさしい風は、まるで古龍の心そのもののよう。

 パッロとリンコ、ムスティは、少し疲れた様子で先を歩いた。
 ときどきうしろを振り返っては、早く帰ろうと言いたげに見てくる。

 リュミとエルドは、そのあとをゆっくりと歩いていた。
 リュミはスカートの裾を握りしめて、なにか言いたそうにしていたけれど、言葉が見つからないまま沈黙が続く。
 その沈黙の中、エルドがふいに口を開いた。

「……おまえ、フォレステア家の生まれだったんだな」

 リュミは少し驚いて顔を上げる。
 こもれびの中、エルドの横顔がやさしく照らされていた。
 いつもよりほんの少しだけ穏やかなその表情に、リュミは緊張が少しだけほどけた。

「うん。でもリュミ、家のことはあんまり知らないの」

「……は。あの家の連中が、まともになにかを教えるとは思えんな」