魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


「あなたは……古龍さん?」

「そう呼ばれていた。だが、長く生きすぎて……名も、森も、自分の姿すら忘れてしまった」

 光の中に、白くて大きな影が現れる。
 それは、巨大な龍の姿だった。

 体を包む鱗は透明で、重なり合うたびに、金と青の波を生む。
 その姿は荘厳で、美しく、どこか悲しい。

 少しでも古龍の苦しみが軽くなるようにと使った《ふわふわ》。
 それは、リュミにだけ与えられたスキル。
 成功すれば、パッロやリンコ、ムスティのように、愛らしい姿になってくれるはずだった。

 リュミの目に、涙がにじむ。

「リュミ……古龍さんをふわふわにできなかったんだね。ごめんなさい……」

「違う。おまえの光が、我を目覚めさせたのだ」

 その声には、怒りも責める気持ちもなかった。
 ただ静かに、疲れたように、語りかけてくる。

「我はこの森の痛みを引き受け、長い眠りについていた。瘴気に蝕まれ、龍としての魂すら、朽ちかけていた。だが……おまえのスキルが、この穢れを洗い流してくれたのだ。ありがとう。ようやく……龍として、終わりを迎えられる」

 リュミが口を開こうとした瞬間、龍はゆるく首を振った。

「礼になるかはわからぬが……ひとつ、話をしてやろう。そのスキル……《ふわふわ》は、決してハズレなどではない。フォルステアの使命をまっとうするために、女神より授けられた、意味ある力なのだ」

 次の瞬間、光景が揺らいだ。
 リュミの目の前に、緑の森が広がる。
 木々のざわめき、小鳥のさえずり、草のにおい。生き物たちの命の音が、生き生きと響いている。