魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


 声が震える。
 顔を上げると涙が頬をつたって、ぽたりと泥の上に落ちた。

「こんなことでくじけるようでは……おまえを古龍のもとには連れていけん」

 その言葉は厳しかった。でも、ただの叱責ではない。どこかで、試されているような気がする。
 エルドの目は、リュミを責めてはいなかった。ただ現実を、まっすぐに突きつけているだけ。

 リュミは、きゅっと唇を噛みしめた。
 拳を握って、ぐいっと涙を拭う。

「……わかってるもん……! だから、リュミ……」

 泣いている場合じゃない。
 小さな体で、リュミは精一杯、立ち上がろうとする。

「……だいじょうぶ。リュミ、がんばる。もう……ないたり、しないもん……!」

 その決意の言葉に、エルドは静かに目を細めて、無言で頷いた。
 けれど――その一瞬の静けさを、鋭い音が突き破る。

 茂みの奥から、なにかがこちらへ向かってくる。
 うなるような、低くて荒々しい声。
 次の瞬間、リュミの視線の先に、何頭もの獣たちが姿を現した。

 イノシシ、キツネ。けれど、どれもおかしい。
 目が濁り、毛並みは逆立ち、口元には白い泡がこびりついている。

 牙をむき出しにして、理性のかけらもない。
 彼らもまた、瘴気に深く侵され、正気を失ってしまった獣たちだった。

「下がれ、リュミ!」