「下がれ」

 エルドの低い声が、空気を切るように響いた。
 その直後、ざざっと落ち葉を踏みしめる音が、どこからともなく近づいてくる。

 不規則で重たく、まるでなにかを引きずるような足音。
 一瞬で、空気がぴんと張り詰めた。

 リュミの鼓動だけが、耳の奥でがんがんと鳴り響いている。
 手のひらは冷たく汗ばみ、指先から冷えていくのがわかる。

 森の奥で、なにかが動いている――。