夜明け前。
空がまだ、深く澄んだ群青色に染まっていたころ――リュミは目を覚ました。
静まりかえった部屋の中で、体を起こす。
窓をそっと開けると、刺すような冷気が頬を掠めて入り込み、思わず身を竦めた。
ひゅう、と吹き抜けた風が、眠気の残る頭を一気に冴えさせる。
(今日……古龍さんのところへ、行くんだ)
胸の奥にしまっておいた決意を、自分自身に言い聞かせるように心の中でつぶやく。
その瞬間、きゅうっと胸が締めつけられ、呼吸が少しだけ浅くなった。
昨夜のうちに荷物は整えてあった。
干し肉、黒パン、水筒に、いざという時のための膏薬。
リュックはそれほど重くない。けれど、それを背負う自分の背中が、ずしりと重く感じられた。
足音もなく近づいてきたパッロが、リュミの手にぐい、となにかを押し当ててきた。
手渡されたのは――鞘に収められた、銀のナイフ。
「護身用だ。……使わずに済むなら、それが一番いいけどな」
パッロの声は、低くて落ち着いている。いつもと同じ、静かな声だ。
けれど、その瞳の奥には、言葉にはしない不安の色がひそんでいた。
きっと彼は知っている。これから向かう先が、どれだけ危険な場所かを。
リュミは黙って頷く。
銀のナイフをおそるおそる腰のベルトに差し込むと、鞘越しでも冷たさが指先に残った。
「……本当に行くのね?」
その声に、振り返る。
声の主は、椅子の背もたれにとまっていたリンコだった。
羽を震わせながら、不安そうにリュミを見つめている。
空がまだ、深く澄んだ群青色に染まっていたころ――リュミは目を覚ました。
静まりかえった部屋の中で、体を起こす。
窓をそっと開けると、刺すような冷気が頬を掠めて入り込み、思わず身を竦めた。
ひゅう、と吹き抜けた風が、眠気の残る頭を一気に冴えさせる。
(今日……古龍さんのところへ、行くんだ)
胸の奥にしまっておいた決意を、自分自身に言い聞かせるように心の中でつぶやく。
その瞬間、きゅうっと胸が締めつけられ、呼吸が少しだけ浅くなった。
昨夜のうちに荷物は整えてあった。
干し肉、黒パン、水筒に、いざという時のための膏薬。
リュックはそれほど重くない。けれど、それを背負う自分の背中が、ずしりと重く感じられた。
足音もなく近づいてきたパッロが、リュミの手にぐい、となにかを押し当ててきた。
手渡されたのは――鞘に収められた、銀のナイフ。
「護身用だ。……使わずに済むなら、それが一番いいけどな」
パッロの声は、低くて落ち着いている。いつもと同じ、静かな声だ。
けれど、その瞳の奥には、言葉にはしない不安の色がひそんでいた。
きっと彼は知っている。これから向かう先が、どれだけ危険な場所かを。
リュミは黙って頷く。
銀のナイフをおそるおそる腰のベルトに差し込むと、鞘越しでも冷たさが指先に残った。
「……本当に行くのね?」
その声に、振り返る。
声の主は、椅子の背もたれにとまっていたリンコだった。
羽を震わせながら、不安そうにリュミを見つめている。



