机の上の調合道具は、どれも手入れが行き届いており、使いやすさを追求したつくりになっている。
 ここで日々エルドが研究を重ねているのだと思うと、自然と気が引き締まった。

 ごり、すり……ごり、すり……。

 乳棒をしっかり握り、材料を混ぜていく。

 視線を上げると、机の端に立つリンコがふわりと羽を膨らませてこちらを見守っていた。
 パッロは尻尾を揺らしながら、傍らで首をかしげている。

 ふたりのまなざしは、声に出さなくても「頑張れ」と語りかけてくれるようで――リュミは気合いを入れる。

 材料が均一になったのを確認し、小瓶の油を少しずつ加える。
 油と薬草の粉がなじむよう、乳棒をくるくるとゆっくり回す。

 粘り気が指先に伝わるたびに色が深まり、薬草の粉は徐々に膏薬へと姿を変えていった。

「……もう少し」

 やがて、乳鉢の底にはとろりとした緑色の膏薬ができあがった。

(リュミにも……できた!)

 リュミは満足そうにふすんと息を吐く。
 ふと横を見ると――、

「……縫う……補強」

 ムスティが静かに糸を紡ぎ、布を縫っていた。

 蜘蛛の魔物である彼が紡ぐ糸は強靭で、しかも驚くほど繊細だ。彼のそばには、ほころびを補修した道具袋や、小さなマントのようなものまで形になっている。