(だったら……もしかしたら……)

 リュミはそっと息を吸い込んだ。

「……あの、」

 小さな声。けれど、迷いはない。

「《ふわふわ》なら……もしかしたら、いたいの、なくしてあげられるかもしれない」

 リュミが言った瞬間、部屋の空気がひときわ張り詰めた。
 鋭い声が、リュミの背後から飛ぶ。

「リュミ、バカなの⁉ あんた、そんなの……」

 リンコだった。
 羽を小さく震わせ、わずかに身を乗り出すようにして言い放った彼女の瞳は、不安と恐れが浮かんでいる。

「そんなの無茶に決まってるでしょ! あんたが行って、どうするのよ……!」

 その声は強く、冷たくも聞こえるけれど――その一言一言の裏には、彼女の焦りや心配がにじみ出ている。

 けれど、リュミは振り返らなかった。
 視線はまっすぐ、エルドを見つめている。

「できないかもしれない。でも……それでも、やってみたいの」

 小さな体に込められた、小さくない覚悟。
 六歳の子どもの言葉には不釣り合いなほどの決意が、そこにはあった。

「だって、ずっとひとりで苦しんでいるんだよね? こわくて、さみしくて、どうしたらいいのかもわからなくて……そんなの、すごく、かわいそうだよ」