魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


「……放っておいたらどうなるの?」

 ようやく出せた声は、細く頼りない糸のようだった。

「森がもたない。いずれ村にまで被害が及ぶだろう。そのあとは……」

 エルドはそれ以上を語らなかった。
 だが、その続きを想像するには十分すぎる沈黙である。

 滅び。崩壊。終わり。
 恐ろしい言葉が、リュミの心をきゅっと締めつける。

 けれど、エルドの声には別の色も混じっていた。
 怒りでも恐れでもない、かすかな、けれどたしかに存在する、願いの色。

「それでも……ワシは願っていた。せめて、最期くらいは安らかに、と」

 エルドの拳が、静かに握りしめられる。
 その拳を照らす暖炉の火が、大きく影を作る。
 震えるその手は、命と森を見守り続けた者の、覚悟の手だ。

「だが……ワシの予想を超える速さで、森は崩れ始めている……」

 リュミの胸が痛んだ。
 苦しんでいるのは、古龍だけではない。
 この森を見守ってきたエルドもまた、同じように、いや、それ以上に苦しんでいる。

 ふと、視界の端にパッロのふわふわの尻尾が見えた。
 リンコのもふもふな羽毛と、ムスティの丸い体も、リュミの目に映る。

 パッロもリンコもムスティも、みんな、かつては苦しんでいた。
 リュミが《ふわふわ》を使う前は、怖れや痛みを抱えていたのだ。