「料理っていうのはセンスなのよ! たとえばこの木の実、入れるだけで味がぜんぜん変わるの。すごいでしょ!」
自信たっぷりな顔で、赤い実をテーブルの上に転がすリンコ。その表情は、勝利を確信した将軍のようだ。
「おいリンコ、それ苦いんじゃないか?」
パッロが目を細める。
「苦い? ……ちょっとだけよ! ほんのひと粒でスープに深みが出るんだから!」
「じゃあ、たくさん入れたらもっとおいしくなるんじゃないかな!」
リュミがそう言って追加の赤い実を取りに行こうとすると――。
「な、なに言ってんの! バランスが肝心なの! そんなに入れたら味が壊れちゃうわ!」
リンコが翼をばっと広げて進路をふさいでくる。
「バランスとか言いながら、勝手に鍋に放り込んでるじゃないか!」
「えへへ……」
「笑ってごまかすな!」
そんな掛け合いがキッチンに響く。
最初は不安と緊張に包まれていた空間が、だんだんと笑い声とあたたかいざわめきに変わっていく。リュミの心も、少しずつほぐれてきた。そのときだった。
「……野菜、切る」
ひそやかな声が、背後からそっと届く。
「えっ、ムスティ?」



