「……ここに、リュミの居場所はあるのかな……」

 つい、声が漏れた。
 誰に届けるでもない、弱々しいひとりごと。

 でも、その言葉を口にしてしまった瞬間、胸の奥がぎゅうっと締めつけられるように痛くなった。
 どこにも居場所がない──そんな考えが、心に忍び込んでくる。

 そのときだった。

 ガサッ……。

 不自然な音が、茂みの奥から聞こえる。

 リュミはびくりと立ち止まった。

 風は止まっている。葉も揺れていない。それなのに、明らかになにかが動いた。
 気のせいなんかじゃない。確実に、そこにいる。

 周囲を見回すけれど、なにも見えない。
 だけど、感じる。木々の向こうから、なにか大きな気配が、息を潜めてこちらを見ているのを。

 ズン……。

 地面が揺れた。
 いや、足元が震えたのかもしれない。

(ちがう……ちがう、これは……)

 大地そのものが鳴ったような、重たく鈍い音。
 その音が、まっすぐに自分に向かって近づいてくる。

 背中に嫌な汗が流れる。
 空気が凍りついたように静まりかえり、鼓動だけがやけに大きく感じられる。

(なんで……なに……なにが……)