「だ、だいじょうぶ! 見よう見まねだけど……がんばるから!」

「ふーん。まぁ、せいぜい頑張って? でも、失敗してもわたしのせいにしないでよね」

 くちばしをくいっと上げて、リンコは翼を小さく広げてみせる。その態度に少しムッとしながらも、リュミは取り直してカッティングボードの上に肉の塊を置き直した。
 ナイフを構えて、深呼吸。いざ、という思いで刃を押し込もうとしたのだが――。

「んんーっ……かたいよ……」

 予想以上の固さだった。力を入れても、刃先は肉にほんの少ししか食い込まない。ギリギリと手に力を込めると、ナイフがぐらぐらと震えだす。
 そして、ズルッ。

 危ない!と思わず手を引っ込める。あと少しで指を切るところだった。

「おいおい、見ていられないな」

 パッロが歩み寄ってきて、リュミの手から肉をひょいと奪う。

「えっ、パッロ?」

 パッロは無言のまま、爪をシュッと伸ばしたかと思うと――一瞬で肉を切り裂いてしまった。
 カッティングボードの上には、見事にそろった細切れ肉がずらりと並んでいる。

「ど、どうしてそんなに早いのっ!?」

「切るのも裂くのも朝飯前だ」

 自信満々に胸を張るパッロの姿は、まるで戦士のように頼もしい。

「ふん、ただ爪が尖ってるだけじゃない」

 そこに、すかさずリンコがくちばしを尖らせて割り込んできた。