ぐいと腕を掴まれたまま、リュミは言葉を失った。
叱られているのに、怒鳴られているのに――胸の奥がざわめいている。
(エルドさん……)
エルドはやさしいけれどそっけなくて。
だから、リュミなんてただの観察対象くらいにしか思っていないと、ずっと思っていた。
でも今、こうして本気で叱ってくれている。心から、怒ってくれている。
それは、リュミという存在が彼にとって大切なものになっている証拠なのだろうか。
驚きと戸惑いが入り交じって、胸がいっぱいになる。
怒られて怖いはずなのに、不思議と心があたたかい。
「もしおまえが傷でも負ったら、どうするつもりだった」
「……」
「おまえは自分ひとりだけじゃないんだ。リンコもパッロもいる。……ワシもいる」
胸がドキンと跳ねた。
その言葉は、まるで深く刺さる矢のように、まっすぐ心の真ん中に届く。
リュミの無茶で、みんなが心配している。
エルドは、それを伝えたかったのだ。どうしても。
「ごめんなさい……」
ぽつりと漏れた謝罪の声は、わずかに震えていた。
エルドはしばらく黙ってリュミを見つめ、それから深く、ゆっくりと息を吐く。
「……わかればいい」



