もう大丈夫。
 そう言っているように感じられて、リュミは笑顔で叫ぶ。

「ありがとう!」

 蝶は応えるようにもう一度羽ばたき、森の中へと消えていった。

「リュミおねえちゃん、すごい!」

「ほんとに魔物とおともだちなんだね!」

「ねぇ、また来てくれるかな?」

 子どもたちが一斉に駆け寄ってきて、リュミの手を握ったり、腕に抱きついたりする。

「ち、ちがうよ。すごいのはあの蝶さんで……」

「でも、リュミおねえちゃんがおともだちにしたんでしょ?」

「うん! おねえちゃんのおかげだよ!」

 顔が真っ赤になって、俯いてしまう。
 胸の奥があたたかくて、くすぐったい。

「……よかった」

 *

 一方そのころ、エルドは険しい顔で村の中を駆けていた。
 ひとりの村人からの報告が、頭の中で何度も反芻される。

「子どもたちと……? リュミが……⁉」