(なんとか……しなくちゃ)

 再びスキルを使おうとした、そのとき──。

 ふわり、ふわり。

 やわらかい光が視界を横切る。

 ひらひらと舞う白い羽。
 そこに現れたのは、一匹の蝶のような魔物だった。

 記憶の中にある姿と重なる。

「あっ……」

 そうだ。前にリュミが《ふわふわ》にした魔物──。

 蝶はひらひらと群れの中に入っていくと、羽ばたきながら鱗粉を散らした。
 すると、あれほど荒れていた羽虫たちが、次第に静かになっていく。

 羽音がすうっと収まり、騒がしかった空気が一気に落ち着く。
 羽虫たちは整列するようにして飛び立ち、次々と森の奥へと戻っていく。

「……すごい」

 子どもたちが、ぽかんと口を開けてその光景を見つめていた。見上げている。

 最後に蝶がリュミのほうを振り返る。
 ふわっと羽ばたいて、空中に小さな光の輪を描く。