魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~


 悲鳴は上げなかったけれど、思わず一歩引いた。
 子どもたちも広場の手前で立ち止まり、顔を青ざめさせている。

「ね、ね? こわいでしょ?」

 子どもたちも立ち止まり、不安そうにリュミを見上げてくる。
 視界の端に黒くうごめくなにかが映るたび、背筋がゾワゾワする。

(あんなのが、体中にまとわりついてきたら……)

 嫌な想像が脳裏をかすめる。
 それでも、リュミはその恐怖を顔に出さず、ぐっと奥歯を噛み締める。

「……やってみるね」

 そう言って、リュミは胸の前で拳を握りしめ、深く息を吸い込んだ。
 そして、静かに目を閉じる。

「《ふわふわ》になぁれ」

 たしかにスキルを使ったのに、羽虫たちは羽音を強めただけで、収まる気配がない。

「え……」

 数が多すぎるのか、心の声が届かないのか。
 それとも、他に原因が?

「リュミ!」

 リンコの声が飛んでくる。

「下がりなさい!」

 けれど、リュミは動けなかった。
 すぐうしろに、子どもたちがいるのだ。自分が下がれば、代わりに子どもたちが危険にさらされる。