不安げな声。
 リュミの服の裾を、小さな手がぎゅっと握る。その手はかすかに震えていて、恐怖がそのまま伝わってくるよう。

(こんなにこわがっているのに、なにもしないなんてできない……)

 リュミはそっとしゃがみ込み、小さな手をやさしく包み込むように握る。

「……わかった。じゃあ、いっしょに行ってみようか」

「ほんと⁉︎」

「やったー!」

 子どもたちの表情が、ぱっと明るくなる。
 少し離れたところで羽繕いをしていたリンコが、呆れたようにため息を吐く。

「……面倒ごとに首を突っ込むの、ほんっと好きね」

「リュミはそういう子だからな」

 パッロは苦笑しつつも、どこか誇らしげだ。
 リュミは照れくさそうに肩を竦める。

「だって、困ってるのに放っておけないもん」

 案内されるまま、村はずれにある広場へ向かう。

 そこは、木々に囲まれた、小さな子どもたちの遊び場。
 いつもなら笑い声が響いている場所だが……。

「わ……」

 低いうなり声みたいな羽音が響いている。
 十匹、二十匹……いや、もっといるかもしれない。無数の羽虫がブンブンと飛び回り、木の枝から枝へと移動している。