「エルドさん、もしかして知ってたの?」
「なんとなく、だがな。最近、森の奥から吹く風が重たくてな。空気が変わったと感じていた」
さすがエルド――とリュミは思った。
人知れず黙々と研究を続ける彼には、きっとふつうの人には感じ取れないなにかが見えているのだろう。
「ムスティが言う黒い気配は、それはおそらく……森の奥深くに棲まう魔物だ」
「魔物だったら、リュミが助けてあげられるかも!」
ぱっと立ち上がるリュミ。握られた小さな拳には、たしかな決意が宿っている。
スキル《ふわふわ》。
この力で、これまで何度も危機を乗り越えてきた。
その自信と想いが、リュミの背中を強く押していた。
「なに言ってるの⁉ 危険すぎるに決まってるでしょ!」
「リュミ、軽々しく言うべきじゃない」
リンコが鋭く声を上げる。
パッロも静かに諫めたが――。
「だが、放置もできないな。いずれ、被害が出る」
「パッロまで……!」
パッロの援護に頷きかけたリンコだが、すぐに怒ったように言い返す。
「こわいけど、放っておけないよ。だってリュミ……森のみんなと、これからも笑っていたいもん」
「……リュミは、どうしてそんなに……」



