リュミは息を呑む。
しまった。リンコが言葉を話せるということを、村人たちはまだ知らない。
知られてしまえば、リンコに余計な警戒や疑念が向けられる可能性もある。
慌てて前に出たリュミが、、両手をぶんぶん振りながら声を張る。
その視線に応えるように、エルドは腕を組んだまま、うん、と静かに頷いた。
「ああ」
村人たちは一瞬きょとんとした顔を見せる。
だが、すぐにそれぞれ顔を見合わせて、にっこりと笑った。
「おお、そうかそうか。嬢ちゃんも手伝ってくれたのか!」
「えへへ、そうなの! 蜘蛛の巣だって焼き払ったし、リスも助けたんだよ!」
目を輝かせて語るリュミの様子に、村人たちも頷きながら「そりゃすごい」と口々に褒める。
その輪の中に、パッロも「ワフッ」と犬のような声を上げて加わる。尻尾をぶんぶん振りながら、リュミの話に勢いを添えるようだった。
リンコは不服そうにそっぽを向いたけれど、それでもリュミにだけ届くような小さな声で、ぽつりとつぶやいた。
「悪かったわね」
*
家に戻ると、ムスティはさっそく、自分にできることを見せてくれた。
破れた布巾をちくちくと器用に縫い直し、端のほつれたカーテンを補修する。繊細に、誰よりも手早く、そして丁寧に。
「わぁ……ムスティ、すごい!」
リュミが感嘆の声を上げると、ムスティはぴたりと動きを止め、恥ずかしそうに俯く。
そのしぐさがまたかわいらしくて、リュミもパッロも思わず頬を緩ませる。



