あの頃の俺たちと、今の俺たち。
そして、記憶の中にある俺たち。

「行くよ!!」
「うん!!」
「せー、の」

「やったぁ!! プリン綺麗に出たー!!」

高校卒業から8年。君と出会って10年。あの頃よりかなり君に馴染んだ俺がいる。

「カラメルソースかけ放題」
「えっ、ご褒美過ぎー!!」
「もっとかけても良いよ」
「君の分は?」

「実はこのプリン、何もかけない方が美味い」
「ちょっとー!!」

君は勤め先の美容院から、俺は会社から帰ってきて、交代でドロドロの汗と疲れをさっぱりシャワーで流して、
朝、俺が作って冷蔵庫で冷やしておいたプリンを食べながらビールを飲んでいる。
「プリンとビール合わない」
「チューハイもあるよ」
「ありがとう。
よし、そろそろおつまみ出そう。コンビニのでごめんけど」
「コンビニのお惣菜はクオリティ高いよ」

神奈川県の私鉄沿線。
1Kの俺のアパートの部屋でのんびり過ごす夜。外は暑いが中は冷え冷え。君が来てくれて茶色のくまさんも嬉しそうだよ。あ、彼、元はきみのだ。
借りていた本を返さなきゃ。俺の本棚に馴染んで最初から俺のみたいになっている。新しく買って返そうか。(それを「プレゼント」と言えるほど強い性格じゃない。もう1冊添えて返そう)