契約結婚した白虎の姫巫女

「……お姉ちゃん」

 ボロボロと泣き出す茜を結羅は抱き締めしてあげる。
 匠はその姿をジッと眺めていると、茜は匠を見ながら「ありがとう」とお礼を言う。
「主の計画のためだ」と、言いながらも照れくさそうに匠は目線を逸らしていた。

 その後。麻美の容態は大丈夫だったが、警察と保護者の監視のもとで転校することに。
 田舎の祖父母のところで預かってもらうことになったとか。
 今回のことは学校の説明もあって、茜の濡れ衣は無事に晴れる。クラスの子達は悪かったと謝罪してくれたそうだ。
 岡本莉子も謝罪をするが、真っ直ぐな茜に憧れを抱いたようで、傍から離れない。
 また今回に事件で結羅の不思議な力を目撃したクラスの子達は、ちょっとした話題になってしまった。
 白石神社の巫女だと分かると、麻美は彼女が救ったとされた。茜は自慢げになるが、それは広めてほしくない結羅は複雑な気持ちになるのだった。
 しかし、事件はそれでは終わらなかった。黒色の影がひっそりと潜む中で、1人の女性が暗い部屋で一枚の写真を眺めていた。
 そのポスターサイズに大きく引き伸ばした写真には伊織が写っている。指で伊織の口元をなぞりながらクスッと笑う。

「絶対にあなたを手に入れますわ。伊織お義兄様」

 そう言いながら、ギロッと睨みつけた先には結羅の写真が伊織の写真の隣に小さく貼られている。女性は結羅の写真に口紅でバツと書いた。
 そして剥がすと、ビリビリに破いてゴミ箱に捨てる。
「この女……邪魔だわ。伊織お義兄様の花嫁になるのは私よ」と、言いながら。