√スターダストtoらぶ

どうして、だろう。


「どう、した?」


無意識だった。

わたしは彼のパーカーの裾を摘んでいた。


「俺と話したい?」


首を真横に振る。

そんなんじゃない。

話とか何したらいいか、分からない。

何をしたいのか、

どうしたいのか、

どうすればいいか、

分からなくて。

でも、身体が勝手に動いてしまうから

どうしようもなくて。


「今日さ」


彼が代わりに沈黙を壊す。


「俺の…誕生日なんだ」


視線を向ければ目が合ってしまいそうな気がして、動揺が悟られないように地面を見つめる。


「だから1つだけお願い聞いてもらってもいい?叶ったら帰るから」


わたしが黙りこくっていると、彼がわたしの手を払い、しゃがみ込んだ。

嫌でも視界に入ってくる。

わたしは伏せた目を上げられず、ただ呼吸だけをして放たれる言葉を待った。

木々がそよそよと音を立てる。

飲みや帰りのサラリーマンの陽気な鼻歌が耳に入る。


「あんまりしつこいと困らせるだけだと思うから、今日で最後にする。俺の想いを聞いてほしい。それが、最後のお願い。高橋さん…俺はキミのことが大好きだ。俺にとって特別な日にキミに会えて、ほんと…嬉しい。何もしてくれなくても、何も言ってくれなくても、ただこうして顔を見られるだけで胸がいっぱいになる。そんな大切な人に会えただけで、俺生きてて良かったって思えた。俺の大切な人になってくれてありがとう。ありがとう…らぶ」


雑音を貫いて言葉はわたしの胸で留まった。

心の水面に美しい月が揺れている。

ぽちゃんぽちゃんと水滴が落ちて優しい音を奏でている。

水面に広がる波紋。

ゆっくりとわたしの心を満たして

色づけて、

全身を巡っていく。

この現象に、

この感情に、

名前をつけるならば…。