「お嬢さん」
人差し指の震えが止まった。
わたしは声の聞こえた方を見た。
目が合って咄嗟にそらした。
何で今…?
やっと時間が出来たのに。
何でみんな邪魔するの?
まるでわたしの判断が間違ってるって言われてるみたいじゃん。
秋風と共に甘い香りが近づく。
やがて目の前でふわっと香って頭上から声が降ってきた。
「隣いい?」
首を真横に振った。
良いわけない。
わたしは今から大事なことを伝えるのだから。
他の男の人のことなんか構っていられない。
「じゃあ、言うだけ言ったら帰る。今日はありがとう。俺の代わりにバイト出てくれて。文化祭の帰りに寄ったらやっぱり高橋さんが代わってくれたって聞いてさ。お礼しなきゃと思って」
「変なとこ律儀ですよね」
わたしがそう言うと、いつもの乾いた笑い声が耳をすり抜けた。
ひゅーっと風が吹く。
さすがに秋だから肌寒い。
やっぱり帰ろうかな。
でもそれじゃあこの人と同じ電車に乗らなければならなくなるし。
「律儀…なんかじゃない。そんなのカモフラージュで、ほんとはただ…ただ高橋さんの顔が見たかっただけなんだよね」
「え?」
何を言ってるんだ、この人は?
早く行ってほしくて軽蔑の眼差しを向けたというのに彼はまだ笑ってる。
憎らしいほどに爽やかな笑顔だ。
たまに見せるようになった人間らしい笑顔にわたしの胸がドクンとなる。
これは誤作動。
こんなの…違う。
違う。
違う。
違う。
そう、思うのに。
「文化祭来てくれたんだよね?俺たちのクラスはコスプレ喫茶でさ、なんかまた地雷踏んじゃったら申し訳なくて何も言ってなかったけど、りんも来てくれたって言うし、楽しんでくれたみたいで良かった。…けど、最近文化祭の準備や何やでバイト行けてなかったし、誘わなかったし、それでまぁ…高橋さんに会えなくてロスっていうか、そんなになっちゃって。…って、言ってて恥ずいんだけど。ほんとさ…どうしようもないくらい…てあぁ、また言いそうになった。もう、ダメだ。俺、帰る。高橋さんも気をつけて帰ってね。じゃあ…」
人差し指の震えが止まった。
わたしは声の聞こえた方を見た。
目が合って咄嗟にそらした。
何で今…?
やっと時間が出来たのに。
何でみんな邪魔するの?
まるでわたしの判断が間違ってるって言われてるみたいじゃん。
秋風と共に甘い香りが近づく。
やがて目の前でふわっと香って頭上から声が降ってきた。
「隣いい?」
首を真横に振った。
良いわけない。
わたしは今から大事なことを伝えるのだから。
他の男の人のことなんか構っていられない。
「じゃあ、言うだけ言ったら帰る。今日はありがとう。俺の代わりにバイト出てくれて。文化祭の帰りに寄ったらやっぱり高橋さんが代わってくれたって聞いてさ。お礼しなきゃと思って」
「変なとこ律儀ですよね」
わたしがそう言うと、いつもの乾いた笑い声が耳をすり抜けた。
ひゅーっと風が吹く。
さすがに秋だから肌寒い。
やっぱり帰ろうかな。
でもそれじゃあこの人と同じ電車に乗らなければならなくなるし。
「律儀…なんかじゃない。そんなのカモフラージュで、ほんとはただ…ただ高橋さんの顔が見たかっただけなんだよね」
「え?」
何を言ってるんだ、この人は?
早く行ってほしくて軽蔑の眼差しを向けたというのに彼はまだ笑ってる。
憎らしいほどに爽やかな笑顔だ。
たまに見せるようになった人間らしい笑顔にわたしの胸がドクンとなる。
これは誤作動。
こんなの…違う。
違う。
違う。
違う。
そう、思うのに。
「文化祭来てくれたんだよね?俺たちのクラスはコスプレ喫茶でさ、なんかまた地雷踏んじゃったら申し訳なくて何も言ってなかったけど、りんも来てくれたって言うし、楽しんでくれたみたいで良かった。…けど、最近文化祭の準備や何やでバイト行けてなかったし、誘わなかったし、それでまぁ…高橋さんに会えなくてロスっていうか、そんなになっちゃって。…って、言ってて恥ずいんだけど。ほんとさ…どうしようもないくらい…てあぁ、また言いそうになった。もう、ダメだ。俺、帰る。高橋さんも気をつけて帰ってね。じゃあ…」



