√スターダストtoらぶ

「愁真さん?!」


彼は薄暗い玄関に倒れ込んでいた。

靴箱の上に飾られていたと思われる花瓶が割れて破片があちこちに飛び散っている。


「大丈夫ですか?」

「はは。大丈夫。ちょっと目眩がしただけ」

「立てますか?いや、立てなくても這ってでもここから離れてください。破片が飛び散ってて危ないので。今掃除しますから」


わたしの目の前に大きな手が現れる。

しっし、とその手で払われる。

…帰れ。

そう言ってる。

何を今さら…。

入ってしまった時点で

踏み込んでしまった時点で

もう…帰れないんだよ。

戻れないんだよ。

覚悟決めてここにいるんだから、

追い払わないで。

…ほんと、

バカな人。

わたしをみくびってもらっては困る。


「いいから、退いてください!」

「えっ…」

「日本語です。通じてますよね?退いてくださいって言ってるんです。ここに来たのも入ったのもわたしの意思です。愁真さんに誘われて入ったんじゃないです。だから後ろめたくならないでください…」


さすがの彼も観念したのか、壁つたいで自室と思われる部屋に戻って行った。

わたしは仕方なくリビングまで来て、100均で買ったと思しき小さいちりとりとほうきを持って玄関に戻った。

こんなことをするのは久しぶり。

母の三度目の再婚相手にボロアパートの窓を割られた時以来。

あの時は箒なんてなかったからチラシでそれらしいものを作って角まで追いやって集めたものを不燃ごみに纏めて出して…。

慣れっ子だから、大丈夫。

ゴミにもクズにも慣れてるから、大丈夫。