愁真さんは目にも止まらぬ速さでストーリーを読んでいき、あっという間にダイヤを貯めた。
これで文句はないだろと言わんばかりのドヤ顔でわたしを見てくる。
…初めてかも。
この人がこんなに感情的な顔をするの。
初めて、見たよ。
それがわたしの推しのせいなのは
かなり悔しい。
「こっからガチャやれるの?」
「乱数調整の荒技もありますが初心者には分からないと思うのでズバッと行ってください」
「はは。何言ってるか分からないけど分かった。とりあえず押すよ」
女性のわたしでも見惚れてしまうくらい綺麗な指で彼は画面をタップした。
選考画面に切り替わる。
果たして、結果は…。
「あ…」
「北王子御幸…」
やまりんの推しのSR。
「わりと使えるカードなので育成します。親愛度高めて個人ストーリー解放しなきゃならないですし」
「…」
愁真さんは俯いたまま一言も発さない。
なんでわたしより落ち込んでいるのか正直意味が分からない。
そんなに悔しがることなの?
ゲームの何も分かってない人がどうして?
「約束、したじゃん」
そして、唐突に話し出す。
「高橋さんの嫌がることはしないって」
「はい。約束というか愁真さんが宣言されただけですけど」
「はは。でも、一方的にでも、約束しちゃったから…守るよ」
愁真さんが立ち上がる。
意味が分からない。
さっきから何してるの?
何をしたいの?
わたしはどうすればいいの?
風が吹く。
さっきよりもじっとりと肌にまとわりつく。
額から嫌な汗が流れる。
不快感が体全体に広がる。
「気をつけて帰りなよ。ほんと…ごめんね」
彼は去っていった。
何も理解出来なかった。
わたしと推しの関係に運悪く絡んできてしまって、
無意識にわたしを傷つけて。
…だから、か。
傷つけてその償いで推しを出してあげようとした、の?
だとしたら、わたし…
傷つけちゃったのかな…。
小さくなり、やがてその背中は見えなくなった。
満月は煌々と夜空で輝いているのに、
わたしたちのことは光で満たしてはくれなかった。
代わりに出来たのは濃い影だけだった。
わたしはそれからしばらく、どこにも見えなくなった推しの姿を思い出しながら夜風に吹かれていた。
これで文句はないだろと言わんばかりのドヤ顔でわたしを見てくる。
…初めてかも。
この人がこんなに感情的な顔をするの。
初めて、見たよ。
それがわたしの推しのせいなのは
かなり悔しい。
「こっからガチャやれるの?」
「乱数調整の荒技もありますが初心者には分からないと思うのでズバッと行ってください」
「はは。何言ってるか分からないけど分かった。とりあえず押すよ」
女性のわたしでも見惚れてしまうくらい綺麗な指で彼は画面をタップした。
選考画面に切り替わる。
果たして、結果は…。
「あ…」
「北王子御幸…」
やまりんの推しのSR。
「わりと使えるカードなので育成します。親愛度高めて個人ストーリー解放しなきゃならないですし」
「…」
愁真さんは俯いたまま一言も発さない。
なんでわたしより落ち込んでいるのか正直意味が分からない。
そんなに悔しがることなの?
ゲームの何も分かってない人がどうして?
「約束、したじゃん」
そして、唐突に話し出す。
「高橋さんの嫌がることはしないって」
「はい。約束というか愁真さんが宣言されただけですけど」
「はは。でも、一方的にでも、約束しちゃったから…守るよ」
愁真さんが立ち上がる。
意味が分からない。
さっきから何してるの?
何をしたいの?
わたしはどうすればいいの?
風が吹く。
さっきよりもじっとりと肌にまとわりつく。
額から嫌な汗が流れる。
不快感が体全体に広がる。
「気をつけて帰りなよ。ほんと…ごめんね」
彼は去っていった。
何も理解出来なかった。
わたしと推しの関係に運悪く絡んできてしまって、
無意識にわたしを傷つけて。
…だから、か。
傷つけてその償いで推しを出してあげようとした、の?
だとしたら、わたし…
傷つけちゃったのかな…。
小さくなり、やがてその背中は見えなくなった。
満月は煌々と夜空で輝いているのに、
わたしたちのことは光で満たしてはくれなかった。
代わりに出来たのは濃い影だけだった。
わたしはそれからしばらく、どこにも見えなくなった推しの姿を思い出しながら夜風に吹かれていた。



