「おーい、高橋さん」
「あ、はい」
ぼんやりしていたら愁真さんから声がかかった。
「もう上がりの時間だから。ほら、帰ろ」
「らぶ先輩帰りましょう!今日は早く帰ってイベントに備えないと」
「イケナイのイベント?だっけ?」
「そうです!明日15時にぼくの最推しがSSR報酬のイベントが開始するんですけど、その特攻のガチャがあってそれを回さなきゃなんですよー!そうそう!それがしゅー先輩が演じてくださった満月くんで…」
バイトは終わったし、明日から最推しのイベントが始まるということでだいぶ饒舌になってるやまりん。
その隣で愁真さんはいつも通り嘘くさい笑みを浮かべている。
どうせくだらないとか思ってるんでしょ?
それなのにヘラヘラ笑っちゃって。
…嫌い。
なんでやまりんもあんな人のこと気に入ってるんだろ?
意味分かんない。
人たらしみたいなこんな人のこと、
好きになるなんて、
絶対、
何があっても、
ない。
「わたし今日は先に帰るね。お疲れ様」
わたしは二人にそう言い残しそそくさと店を後にした。
そして、店から少し離れたところにある公園のベンチに座りガチャを回す心構えをする。
推しがスマホの画面を占拠する。
何度見ても美しい御尊顔。
優しくて誠実で頼り甲斐のある我が推しの西園寺満月。
「でも…」
思い出してしまう…
あの日のこと。
推しの仮面を被ったクズ男の風貌をわたしははっきりと覚えている。
忘れられない。
消したくても消せない。
本当は満月もあの人みたいな人たらしだったらとか、
中身は超絶クズでメンヘラだったらとか、
悪い妄想で頭がいっぱいになる。
ある意味現実逃避のために始めたゲームだけど、
いつしか推しが心の支えになっていて、
ストーリーを読むごとに“好き”が増えていって、
画面の向こう側にいるけど、
それでも信じられる人に巡り会えたなって思えて、
ただただ嬉しくて、
幸せだったのに。
今はもう…
苦しい。
確かに好きだったはずなのに、
日を追うごとに“好き”が減っていく。
あの人の姿を目にする度に、
胸がチクリと痛くなって
次第に力が抜けていく。
謝ってくれて
許さなきゃならないのも分かってる。
分かってる、けど。
好きだからこそ、
許せないこともある。
それだけわたしは
大好きだったんだよ…。
「あ、はい」
ぼんやりしていたら愁真さんから声がかかった。
「もう上がりの時間だから。ほら、帰ろ」
「らぶ先輩帰りましょう!今日は早く帰ってイベントに備えないと」
「イケナイのイベント?だっけ?」
「そうです!明日15時にぼくの最推しがSSR報酬のイベントが開始するんですけど、その特攻のガチャがあってそれを回さなきゃなんですよー!そうそう!それがしゅー先輩が演じてくださった満月くんで…」
バイトは終わったし、明日から最推しのイベントが始まるということでだいぶ饒舌になってるやまりん。
その隣で愁真さんはいつも通り嘘くさい笑みを浮かべている。
どうせくだらないとか思ってるんでしょ?
それなのにヘラヘラ笑っちゃって。
…嫌い。
なんでやまりんもあんな人のこと気に入ってるんだろ?
意味分かんない。
人たらしみたいなこんな人のこと、
好きになるなんて、
絶対、
何があっても、
ない。
「わたし今日は先に帰るね。お疲れ様」
わたしは二人にそう言い残しそそくさと店を後にした。
そして、店から少し離れたところにある公園のベンチに座りガチャを回す心構えをする。
推しがスマホの画面を占拠する。
何度見ても美しい御尊顔。
優しくて誠実で頼り甲斐のある我が推しの西園寺満月。
「でも…」
思い出してしまう…
あの日のこと。
推しの仮面を被ったクズ男の風貌をわたしははっきりと覚えている。
忘れられない。
消したくても消せない。
本当は満月もあの人みたいな人たらしだったらとか、
中身は超絶クズでメンヘラだったらとか、
悪い妄想で頭がいっぱいになる。
ある意味現実逃避のために始めたゲームだけど、
いつしか推しが心の支えになっていて、
ストーリーを読むごとに“好き”が増えていって、
画面の向こう側にいるけど、
それでも信じられる人に巡り会えたなって思えて、
ただただ嬉しくて、
幸せだったのに。
今はもう…
苦しい。
確かに好きだったはずなのに、
日を追うごとに“好き”が減っていく。
あの人の姿を目にする度に、
胸がチクリと痛くなって
次第に力が抜けていく。
謝ってくれて
許さなきゃならないのも分かってる。
分かってる、けど。
好きだからこそ、
許せないこともある。
それだけわたしは
大好きだったんだよ…。



