ターゲットを発見した。
聞いていた話じゃ、年相応なんだかじゃないんだか、正直僕には判断がつかなかったけど。
見た感じは、同年代の子よりも少し小さい気がする。
今は、一人でお人形遊びをしているところのようだ。
僕から見たターゲットは、すごく不服そうな顔をしている。
遊んでいるのになぜそんな顔をしているんだ?
僕には理解できない。
だがきっと、あのカリスマ性溢れすぎてる先輩なら理解できるだろう。
僕はあの先輩と知能レベルは同程度か、僕の方が優れていると自任している。
ようするに、僕が理解できないのは、働き始めの僕と10年以上働いている先輩との間にある差が原因だろう。
つまり、経験値の差だ。
養成学校の実習では、分かりやすい人間しかターゲットにならない。
だが、首席で卒業した僕に与えられた初めての任務は、実習など無意味だと錯覚してしまうほど、
難易度の高い、つまり分かりにくい人間をターゲットとしなければいけないようだ。
きっと、僕なら可能だと上が評価してくれたのだろう。
喜ばしい限りだ。
報酬もきっと高いのだろう。
大いに期待している。
少々話がそれてしまったが、僕が言いたかったのは、つまりこういうことだ。
学校で習ったことを上回る不可解な行動を、このターゲットはしていて、
そして、その行動を理解できないのは、僕のレベルが低いわけではなく、あくまで人間と接してきていないからだ。
ということを言いたかったのだ。
まぁ、前置きはこのくらいにして、ターゲットの観察に戻ろう。
僕が再び観察を始めると、ターゲットは少しして、不服そうな顔をさらにゆがめ、人形を床に放り投げた。
(正直、「ぶん投げた」という表現の方が正しいのではないかと思うレベルの投げだった。)
急に何か気に障ることでもあったのだろうか。
ちょっと、やっぱり理解できない。
とか、のんきに言ってる場合じゃないようだ。
ターゲットから、黒いモヤが湧き出始めた。
ついに、任務が本格的に始まるようだ。
僕を含めた「レイ」という種族は、人間の心から湧き出る黒いモヤを吸収し、
体内に取り込むことで浄化を行う。
浄化を行った黒いモヤは、黒から透明になり、透明なモヤというのになる。
(透明なのにモヤって言うんだ。意味わからないよな。)
その透明なモヤは、僕らのエネルギーにもなるし、僕ら「レイ」の社会を支える大きな資源のようなものでもある。
「レイ」の持つ能力を使って、透明なモヤを原料に、新しい何かを作り出すこともできる。
(イスとかも作れるし、想像したものを創り出すこともできる。)
ただ、人間から黒いモヤが湧き出たからと言って、僕らがすぐにモヤを吸収するわけではない。
なぜなら、浄化は条件を伴うからだ。
その条件とは、「黒いモヤの発生理由と、発生させている人間の感情を理解しいていること」だ。
この条件が達成できていないのに黒いモヤを吸収したりなんてしたら、最悪死に至る。
浄化するから体内に取り込んでも平気なだけで、別に黒いモヤに耐性があるわけではないのだ。
勘違いはやめていただきたい。
「嬉しい」とか「楽しい」とか、そういうポジティブな感情は人間にいい影響を与える。
反対に、「悲しい」とか「苦しい」とか「嫌だ」とかそういったネガティブな感情に支配されると、
体や心に悪い影響が及ぶことがある。
悪影響を及ぼす可能性のある感情からできている黒いモヤは、「レイ」にとっても毒だ。
ポジティブな感情は純粋で綺麗だから、元から透明なモヤとして現れる。
(黒いモヤを浄化してできる透明なモヤもこのモヤと同じ。)
ネガティブな感情は、人間の心にかげりを与えることが多いから、基本的に人間にとっても毒であるという認識を僕らはしている。
毒をとどめておくことは害にしかならないし、最初はかげりを作るだけだが、そのまま心をむしばんでいって、
最初よりずっとひどくなって、最終的に大勢の「レイ」で討伐しなくちゃいけないような怪物が発生してしまう。
怪物はとても厄介で、「レイ」の精気を次から次へと吸い取ってしまう。
つまり、討伐は命がけなのだ。
(だから、怪物が発生する前に黒いモヤを浄化するのだ。)
このような理由で、黒いモヤの浄化が必要となっているし、浄化するために条件を達成する必要があるのだ。
さて、ターゲットから黒いモヤが湧き出ているからには、浄化しなくてはいけない。
一応言っておくと、僕の浄化の腕はトップクラスだ。
先輩実力者と比較しても引けを一切取らない腕前だ。
(この腕前は自他ともに認めている。)
しかし、きっと気づいているだろうが、
すぐに浄化を始められない理由がある。
なぜターゲットから黒いモヤが湧き出したのかも、ターゲットが今どんな感情なのかも、
先ほどから少しも、ほんのちょっとも、答えはおろかヒントすら見つけられていないのだ。
観察当初から僕の理解を余裕で超えすぎておかしなことになっている。
理解が追いつかない僕の頭が。
聞いていた話じゃ、年相応なんだかじゃないんだか、正直僕には判断がつかなかったけど。
見た感じは、同年代の子よりも少し小さい気がする。
今は、一人でお人形遊びをしているところのようだ。
僕から見たターゲットは、すごく不服そうな顔をしている。
遊んでいるのになぜそんな顔をしているんだ?
僕には理解できない。
だがきっと、あのカリスマ性溢れすぎてる先輩なら理解できるだろう。
僕はあの先輩と知能レベルは同程度か、僕の方が優れていると自任している。
ようするに、僕が理解できないのは、働き始めの僕と10年以上働いている先輩との間にある差が原因だろう。
つまり、経験値の差だ。
養成学校の実習では、分かりやすい人間しかターゲットにならない。
だが、首席で卒業した僕に与えられた初めての任務は、実習など無意味だと錯覚してしまうほど、
難易度の高い、つまり分かりにくい人間をターゲットとしなければいけないようだ。
きっと、僕なら可能だと上が評価してくれたのだろう。
喜ばしい限りだ。
報酬もきっと高いのだろう。
大いに期待している。
少々話がそれてしまったが、僕が言いたかったのは、つまりこういうことだ。
学校で習ったことを上回る不可解な行動を、このターゲットはしていて、
そして、その行動を理解できないのは、僕のレベルが低いわけではなく、あくまで人間と接してきていないからだ。
ということを言いたかったのだ。
まぁ、前置きはこのくらいにして、ターゲットの観察に戻ろう。
僕が再び観察を始めると、ターゲットは少しして、不服そうな顔をさらにゆがめ、人形を床に放り投げた。
(正直、「ぶん投げた」という表現の方が正しいのではないかと思うレベルの投げだった。)
急に何か気に障ることでもあったのだろうか。
ちょっと、やっぱり理解できない。
とか、のんきに言ってる場合じゃないようだ。
ターゲットから、黒いモヤが湧き出始めた。
ついに、任務が本格的に始まるようだ。
僕を含めた「レイ」という種族は、人間の心から湧き出る黒いモヤを吸収し、
体内に取り込むことで浄化を行う。
浄化を行った黒いモヤは、黒から透明になり、透明なモヤというのになる。
(透明なのにモヤって言うんだ。意味わからないよな。)
その透明なモヤは、僕らのエネルギーにもなるし、僕ら「レイ」の社会を支える大きな資源のようなものでもある。
「レイ」の持つ能力を使って、透明なモヤを原料に、新しい何かを作り出すこともできる。
(イスとかも作れるし、想像したものを創り出すこともできる。)
ただ、人間から黒いモヤが湧き出たからと言って、僕らがすぐにモヤを吸収するわけではない。
なぜなら、浄化は条件を伴うからだ。
その条件とは、「黒いモヤの発生理由と、発生させている人間の感情を理解しいていること」だ。
この条件が達成できていないのに黒いモヤを吸収したりなんてしたら、最悪死に至る。
浄化するから体内に取り込んでも平気なだけで、別に黒いモヤに耐性があるわけではないのだ。
勘違いはやめていただきたい。
「嬉しい」とか「楽しい」とか、そういうポジティブな感情は人間にいい影響を与える。
反対に、「悲しい」とか「苦しい」とか「嫌だ」とかそういったネガティブな感情に支配されると、
体や心に悪い影響が及ぶことがある。
悪影響を及ぼす可能性のある感情からできている黒いモヤは、「レイ」にとっても毒だ。
ポジティブな感情は純粋で綺麗だから、元から透明なモヤとして現れる。
(黒いモヤを浄化してできる透明なモヤもこのモヤと同じ。)
ネガティブな感情は、人間の心にかげりを与えることが多いから、基本的に人間にとっても毒であるという認識を僕らはしている。
毒をとどめておくことは害にしかならないし、最初はかげりを作るだけだが、そのまま心をむしばんでいって、
最初よりずっとひどくなって、最終的に大勢の「レイ」で討伐しなくちゃいけないような怪物が発生してしまう。
怪物はとても厄介で、「レイ」の精気を次から次へと吸い取ってしまう。
つまり、討伐は命がけなのだ。
(だから、怪物が発生する前に黒いモヤを浄化するのだ。)
このような理由で、黒いモヤの浄化が必要となっているし、浄化するために条件を達成する必要があるのだ。
さて、ターゲットから黒いモヤが湧き出ているからには、浄化しなくてはいけない。
一応言っておくと、僕の浄化の腕はトップクラスだ。
先輩実力者と比較しても引けを一切取らない腕前だ。
(この腕前は自他ともに認めている。)
しかし、きっと気づいているだろうが、
すぐに浄化を始められない理由がある。
なぜターゲットから黒いモヤが湧き出したのかも、ターゲットが今どんな感情なのかも、
先ほどから少しも、ほんのちょっとも、答えはおろかヒントすら見つけられていないのだ。
観察当初から僕の理解を余裕で超えすぎておかしなことになっている。
理解が追いつかない僕の頭が。
