「んー…」
自分の部屋でiPadに向き合い、昨日撮った写真をレタッチしている。
普段の自己満写真は基本レタッチしないけど、これはコンクール用の写真だ。
ちょっとでも映りをよく見せたいというのは人間の性みたいなものだろう。
iPadに取りこんだ昨日の写真の明るさやら彩度を細かく調節していると、「澄羽―。ごはんだから降りてこーい」と階下から父親の声が聞こえてきた。
「はーい」
保存ボタンをタップし、階段を下りる。鼻腔にソースの香りが届く。おそらくそばめしだ。
父親の得意料理であり、たまにある父親の休みにしか食卓に並ばない、ちょっと特別なメニュー。
「ちょっと待ってくれよ、あと盛り付ければ終わるから」
フライパンの中身をのぞくと、中には案の定そばめしが入っていた。
「私手伝うね」
父親が持っている盛り付け用の大きいシリコンスプーンを受け取って、カレー皿にそばめしをよそう。



