「見る?」
プール掃除という名の水かけ大会を終えて、先生が買ってきたアイスを食べながらまったりしていると先生の声がふと部室の空気を揺らした。
「何をですか?」
遥樹くんが先生にそう問うと、「さっきのプール掃除の動画。」とスマホを教卓に置く。
私たち3人は顔を寄せ合って先生のスマホの画面を注視する。
「そんなに顔を近づけると目が悪くなるからちょっと離れて。再生するよ」
先生が教卓越しにスマホに指を伸ばして再生ボタンを押した。
スマホの画面に映ったのは、さっきのプール掃除の様子。柚音がホースを振り回して、私に水をかけてるところから始まった。
「いやっふー!」
画面の中の柚音が叫ぶと、柚音が「そんなこと言ったっけ!?」と笑いながら自分の声に驚いていた。
「待てコラー!!」
私がデッキブラシを持って追いかけてる姿に、遥樹くんが吹き出す。
「この結城こわっ、殺気立ってる!!」
「うるさい!遥樹くんだってホース奪って反撃してたじゃん!」
動画は、遥樹くんがホースを奪い取って、私がデッキブラシをプールサイドに置いたあと、虹がかかった瞬間で一時停止された。
「ここ、いいよな」
先生がぽつりとつぶやく。
画面には、太陽の光を受けて水しぶきが虹を描いている中、私たち3人が笑い合っている姿が映っていた。
「なんか…青春って感じですね」
遥樹くんが、少し照れくさそうに言う。
「うん。…この夏、忘れたくないな」
私も、画面の中の自分たちを見ながら、そっとつぶやいた。
柚音は何も言わずに、手に持ったダーゲンハッツをひとくち食べて、にっこり笑った。
その笑顔は眩しかった。でも1㎜だけ混じった暗い影が含まれていることを、私だけが気付いていた。



