Capture your memories of one summer ~ひと夏、思い出を切り取って~

                      
「生物分かんないよー。遥樹助けてー」

威勢よく理科の問題集を開いて、問題を解き始めたはいいが、開始5秒で手が止まってしまった柚音が半泣きで遥樹くんに助けを求める。

「俺も生物嫌いだから無理。結城に頼んで」

「澄羽っちー、ヘルプミー」

情けない声を発しながら柚音が私のTシャツの袖をつまむ。

「えー?まあ生物はそんな苦手じゃないから助けはできるけど…柚音は何できるの?」

「なんもできないっ!」

どや顔でそう言う柚音に「堂々と言うことじゃないだろ」と遥樹くんの呆れたようなツッコミが入る。

「あっははー。ま、人生には開き直りも大事、ってことで!2人に助けてもらいまーす」

口元でピースサインを作った柚音にまたまた「他人任せすぎ」と遥樹くんのツッコミが入る。

「じゃ―、遥樹は何ができるの」

面白くなさそうに頬を膨らませて、柚音が遥樹くんを軽くにらむ。

「数学だけ。」

私は数学が一番苦手なので、遥樹くんに教えてもらうことにしよう。

私がそう決めて筆箱からペンを取り出すと、ガチャっと誰かが扉を開けて部屋に入ってきた。

「おい夏果」

遥樹くんが手を伸ばして夏果さんをしっしっと追い払うような仕草をしたけど、それも構わず部屋にずかずか入ってきて変なダンスを踊りだした。

「あ、かまぼこダンス!」

柚音がすぐに反応したけど、私はついていけていない。

「おい、夏果。迷惑だから」

遥樹くんの冷たい視線をフル無視して、「万年ぼっちお兄にやっと友達出来て今これ」と夏果さんがぼそっと言った。

「誰が万年ぼっちお兄だ⁉」

遥樹くんが夏果さんに食ってかかったけど、「えー事実じゃん」と彼女はひょうひょうとした表情で言い放つ。

「お前はデリカシーを母親の腹の中に置いてきたのか!」

「近所迷惑―。うっさーい」

夏果さんはわざとらしく耳をふさいで、部屋から出て行った。

嵐が過ぎ去った後の遥樹くんの部屋に、柚音がぷっ、と笑う声が聞こえてきた。

「夏果ちゃんやっぱおもしろ!」

その笑いに誘発されるように、私も思わず笑ってしまった。

「クソお兄とか言ってくるノンデリ妹だけどな」

遥樹くんは私と柚音が笑っているのを、あきれた様子で見ている。