結局柚音のおごりでおやつを調達した私たちはコンビニを出て、遥樹くんの家に向かっているところだ。
灼熱の中自転車を漕いでいると、私の首筋にはじんわりと汗がにじんでくる。
前を走る柚音をちらりと見やると、彼女はこの灼熱の中でも汗ひとつかかずに涼しげな表情をしていた。
ふうっ、と息をついて、ペダルに強く力を込める。
「もうちょいだし頑張ろ!暑すぎてマジしぬけど!」
柚音がこちらを振り返らずにそう言い放つ。
「う、ん…」
全力でペダルを漕いでいたせいで、息が上がってはぁはぁ言いながら柚音に返事する。
視界から流れていく住宅街の中、私は見覚えのある黒い一軒家を見つけた。遥樹くんの家だ。
「ついた…」
柚音が自転車のスタンドを立てて、当たり前のように遥樹くんの家の敷地に駐輪した。
「あ、止めて大丈夫なの?」
私がそう問うと、「ちゃんと許可もらってるからおっけー!」と疲れ切った私とは正反対の元気いっぱいの声で柚音がそう言い放つ。
その勢いで彼女はぱたぱたと軽快な足取りでインターホンに近づいて、ボタンを押した。
「縄野です。遥樹はいますか?」
スピーカーに向かってはきはきした声でしゃべりかける柚音に返事してくれたのは、遥樹くんの妹の夏果さんだった。
『いまーす。お兄の数少ない友達来たよー』
さらっと失礼な発言をする夏果さんに『うっさい黙れ』と遥樹くんの声が返事して、インターホンが切られた。
それとほぼ同時に扉が開き、遥樹くんが顔を出した。
「入って」
私は遥樹くんの家に一歩足を踏み入れた。
掃除が行き届いた空間に置かれている白で統一されたインテリアに、おしゃれなドライフラワーが所々に飾ってある。
「俺の部屋はこっち。」
白い木目調の階段を上ってすぐ左の扉を開けて、遥樹くんが部屋に入ったので私たちはそれについていく。
彼の部屋は黒と木目のインテリアでまとめられた、自分の同級生がここに住んでいるとは到底思えないシックな部屋だった。
「遥樹ー、おやつ買ってきたから一緒に食べよー!」
コンビニ袋に入ったおやつをばらばらとひっくり返しながら柚音がそういう。
「いいけど、勉強会だからな。おやつはメインじゃない」
そういって彼は大きなローテーブルを本棚の隙間から引っ張り出してきた。
「おーすごっ」
思わず声が漏れる。
「一応これもあるから」
そういって遥樹くんがチェアパッドを3つポイポイ投げる。
「ありがとー!神様仏様遥樹様―!」
柚音がその上にドカッと腰を下ろして、トートバッグから数冊の問題集と筆箱を取り出した。
私もトートバッグから数学の問題集と筆箱を取り出して、ロ―テーブルに広げた。



