「練習終わり。片づけを済ませた人から部室に戻ってください」
長い髪をハーフアップにした部長 鍬田麻音が威圧的な口調で練習の終了を告げる。
後ろに置いていた楽器ケースを机に置いて、留め具を外してふたをパカッと開ける。
右手に譜面台、左手に楽器ケースとミュートを抱えて机の間をすり抜けると、部長が座っていた椅子に譜面台の足がぶつかってしまった。
その拍子に、譜面台から滑り落ちた楽譜ファイルがバラバラになって散らばる。
「最悪…」
順番通りに元に戻すのめんどくさいんだよな、と小さくため息をつくと、フルートにクリーニングロッドを通していた部長がぎろりとこちらを睨んだ。
「ご、ごめんなさい」
何に謝っているのかわからないまま、形だけの謝罪を部長にする。
当然部長は無反応でクリーニングロッドを通し続けていた。



