会計を済ませて外に出ると、聞きなれた声が耳朶を打った。
「一緒に食べよー」
いつの間にかコンビニを出ていた柚音が入り口の金属の細いベンチらしきところに足をのばして座って私を手招きしていた。
「うん、食べよ」
友達と買い食いをするのは人生初なので、わくわくする。
白いレジ袋から柚音の分のアイスを取り出して柚音に差し出すと、「ちょっと待って、あたしのアイスいくらだった?」と聞かれてしまった。
レジ袋にアイスを戻して、金属の細いベンチに座って袋の中を漁ると少し水に濡れてしなったレシートが出てきた。
「90円だよ。」
レシートを見せながらそう言うと、柚音がカバンから財布を取り出して100円を出した。
「今細かいのないから100円で許して」
私もトートバッグから財布を取り出して、10円をおつりとして柚音に返した。
「そんなん返さなくていいよ。お礼のプラス10円だし」
柚音に突き返されてしまったが、「申し訳ないよ!」と10円を柚音に渡す。
「いい、いい。お礼として、ね!」
強く拝み倒されて、柚音に渡せないまま消化不良となってしまった10円を財布に戻す。
「じゃ、食べるぞー!」
片手を空に突き上げた柚音がこっちに向いてニッと笑みをこぼす。
「いただきまーす!」
私は袋から自分のアイスを取り出してふたを開け、ピンク色の短いプラスチックピックを手に取った。
求肥に包まれたアイスの中心にピックを刺し、大福を半分かじるとバニラアイスの甘い香りとほんのり甘い求肥の味が口の中に広がった。
「久しぶりに食べたけどおいし~!」
ガリガリ君をかじった柚音が幸せそうな表情を浮かべる。
口の中にいるアイスをもちもちと咀嚼しながら私は本来の目的を思い出していた。
まずやることがなくなって、写真を撮りに行こうと思って外に出て、その道中で遥樹くんに200円を返していないことを思い出した。
LINEを送ろうと休憩も兼ねてコンビニに向かったら、柚音と会って今に至る、という流れであった。
写真はいつでも撮れるけど、借りたお金を返すのは思い出したその時に行動に移さないと忘れてしまいそうである。
「柚音、遥樹くんの家知ってる?」
美味しそうにアイスををかじっている柚音にそう問う。
「まあ、一応知ってるけど…なんで?」
「土曜日に遊びに行ったとき、たこ焼き代の200円を返してなかったから返しに行こうかと思って」
怪訝な顔で見つめられたので、私は身振り手振りで釈明した。
「あ、そういうこと…てっきりストーカーなのかと思った」
困ったように眉を下げて笑う柚音に「ちがうって!」と言い返す。
「ちょっとわかりにくいし、一緒にいこっか?」
アイスの最後の一口をかじった柚音が立ち上がる。
「おねがいしていい?一応遥樹くんに連絡しとくのと、アイス残ってるからちょっと待ってて」
私の手元にあるアイスはまだ丸々1つ残っていたので、そう言い終えてすぐ、ピックに突き刺したアイスをかじった。



