遥樹くんとの電話を終えた私は自分のiPadに入れている、絵を描くアプリで絵の構想を練っていた。
といっても、1から構想を練っているわけではなく、撮りたいものを絵にするあの水色のノートの絵を撮影して、アプリに取りこんで清書しているが。
「歩道橋は近所にあるからいいとして…海はどうしようかなぁ」
私が住んでいる県は海なし県ではないので県外に出る必要はないが、中学生は車を運転できないので海に行くまでには電車かバスを使わないといけない。
しかし交通費がかかるので、貧乏中学生にはちょっと辛い出費である。
あと何より、どこの海にするかを決める必要もある。
私は保存ボタンを押してタッチペンをケースに戻してホーム画面に戻り、GoogleEarthのアプリのアイコンをタップした。
自宅付近にズームしてから、海方面に地図を動かす。
地図を動かしたところでストリートビューに切り替え、白い矢印を押してどんどん北に進んでいくが防波堤とコンクリートの道、青い海しか出てこない。
意味もなくぐるぐる地図を回転させながら考えあぐねていると、iPadのそばに置いていたスマホがぶるっと震えた。
遥樹くんか柚音だと思ってばっとスマホを手に取って確認したが、クーポンをもらうためだけに友達追加したかばん屋の公式ラインだった。
拍子抜けした私はスマホと一緒にiPadで立ち上げていたGoogleEarthを閉じ、絵を描くアプリに戻った。
ケースに入れていたタッチペンを取り出して画面に当ててみるが、手が動かない。
こうなったら今日は描けないので、私はあきらめて水色の手帳型iPadケースにタッチペンを収納して、ペラペラの頼りないふたを閉じた。



