「わたし自転車とってくるから、待っててくれる?」 そういって碧依は駐輪場に向かった。 私は駐輪場のフェンスにもたれて、一眼レフカメラを操作する。 去年の秋に撮った銀杏(いちょう)並木の写真を見てひとり悦に入っていると、自転車のチェーンがこすれるちゃーっという音と、きっ、という小さなブレーキ音が聞こえてきた。 ぱっと顔を上げると、そこには碧依の満面の笑みがあった。 「一緒に帰ろ。」 私はこくりとうなずき、碧依と一緒に歩き出した。