「森村さん、縄野さん。早く準備して」 慌てて顔を上げると、譜面台と楽器ケースを持った鍬田部長がこちらを睨んでいた。 先ほどの交渉とは全く違う姿に緊張してしまう。 「すみません、すぐに準備します」 わたしは楽器ケースからマウスピースを取り出し、急いで手洗い場に向かった。