「これで6時間目の授業を終わります!起立、礼」
『ありがとうございましたー』
ようやく地獄のような学校から解放された私は、腕を伸ばして机に突っ伏した。
「顔死にかけだけど大丈夫?」
窓から3列目の一番後ろに座っていた碧依がこちらに駆けてきた。
「大丈夫だけど、修学旅行あんま知らない人と1日一緒に行動するのが憂鬱だなあって。」
「あはは、確かに。澄羽の班、結構いびつなメンバーだしね」
手をたたいて碧依がおかしそうに笑う。
「真嶋さんと青村さんと澄羽か。女子は悪くないけど。」
真嶋さんと青村さんはクラスのおとなしめの女子グループに所属している。
「男子が微妙なんだよねー。ヤンキーいるし」
私たちの班の男子は瀬川遥樹と、学年のヤンキーグループに所属していて、めったに教室に来ない金井君、おとなしい男子グループでつるんでいる川村君である。
川村君はまあいいとして、問題は瀬川遥樹と金井君である。下手なことをしたら睨まれそうだ。
「そろそろチャイムなりそうだな。ばいばーい」
「あの碧依、頼みたいことが――」
写真コンクールの写真撮影のために人が必要なことをすっかり失念していたので、ワンチャンにかけて…と碧依に声をかけてみる。
しかし私の頼りない声は、チャイムに呑まれて碧依には届かなかった。



