朝まで、グラデーション

 目が覚めると、カーテンの向こう側にある優しい光が部屋の中に漏れていた。朝の五時半。ソファーの上で今野は起きていた。

「あれ、眠らなかったんだ」
「うん、なんか時間が勿体なくて」
「なんで? 私がいるから?」
「うん、そうだよ」

 真剣な眼差しでこっちを見てきた今野。思いがけないところで男な雰囲気を出してきたから、思い切り心臓が跳ね上がった。なんとなく私はカーテンを少しだけ開き、外を眺めた。

「もう朝だ、始発で帰ろうかな?」
「いや、帰りも家まで送るよ」

 今野が家まで送ってくれるだろうなとは思っていたし、送って?って頼もうかなと思っていたけれど、動揺しすぎちゃって始発で帰るとか言ってしまった。

「ありがとう。じゃあ帰る準備をするね」

 外に出る準備を終えると、今野がバイクのキーを持つ。

――もう、終わりかぁ。

 一緒にいた時間が幸せだった分、帰るのが切なくなる。部屋を出るとバイク置き場に着いた。

――寂しいな、まだ一緒にいたいな。

「ねぇ、少し歩いて散歩しない? コンビニで朝ご飯買おうかな」
「いいね」

 私たちは歩いた。コンビニでは、ロールパンとマカロニサラダ、お茶を買った。その後も、まだ一緒にいたいからマンションには戻りたくなくて。今野の前を歩き、気がつけば公園に着いていた。ふたりで並んでベンチに座る。

「美里、また、終電逃したら連絡ちょうだい?」
「また泊めてくれるの?」
「うん、いつでも」
「だけど、なかなか終電逃すことってないかな……」

と言いながらも頭の中で、次の会社での飲み会はいつ頃あるかな?とか、今後の終電を逃す方法をぐるぐると考えてしまう。

「……終電逃してない時でも大丈夫だから」
「ありがとう、またその時は泊めてくれたお礼に片付けするね」
「うん、美里……」

 今野は、再び真剣な表情でこっちを見つめてきた。そんな表情で見つめられるたびに私はドキッとする。

「なに?」
「一緒にいたい人って、美里だから」
「えっ?」
「俺、美里とまだ一緒にいたい」

 珍しく甘えるような声。今野から言われた言葉が胸の辺りにすっと入ってきて、あたたかくなる。

「私も同じ気持ち、かな? じゃあさ、今日どっか遊びに行く? もし今野に予定がなかったらだけど」
「予定、何もないよ。どこ行こうか?」
「じゃあ、バイクで――」

 終電を逃した夜のお陰で、今野との新しいスタートが訪れた。

 鳥の囀る声や爽やかで涼しい風。
 朝の空気も気持ちがよくて、完全に明るくなっていた景色は、さらに輝いていた。