○透子の自室。夜。
透子はベッドに寝転んで今日の出来事を思い返している。
回想。
隼斗「ライバルもわかったことだし、俺、本気でいくから」
透子「え?」
驚きで目を見開く透子。そんな透子を真っ直ぐに真剣な表情でみつめる隼斗。透子は未だ固まったまま。そんな透子を見て、隼斗は表情を和らげる。
隼斗「帰ろうか、送ってくよ」
透子「う、うん」
透子(本気って……。まさか。ね――)
それでも気になって、隼斗のことをスマホで調べてみる。
エーテル時代の隼斗の様子に合わせて、説明文を読む。
南隼斗。21歳。15歳で男性アイドルグループエーテルの一員としてデビュー。20歳でグループが方向性の違いにより解散するまで、中心メンバーとして活躍。エーテル内でも女性人気は一二を争う。グループ解散後は、まずは大学を卒業することと、お芝居に力を入れていきたいと語っている――。
透子(いやいや、こんなすごい人が私なんて相手にするわけないよ)
○翌日 大学の教室 授業前
隼斗「おはよ、透子」
透子「!?」
突然の名前呼びに、透子本人もまわりの友人たちも驚く。
ただ隼斗は気にするそぶりもない。
隼斗「俺、正式に同じサークルに入ることにしたよ。よろしくね」
透子「い、忙しいんじゃないの……?」
隼斗「参加できないこともあるかもしれないけど、ぜひって言ってもらえたから甘えちゃった。だから透子、よろしくね」
透子「え……?」
隼斗「色々教えてよ。あ、連絡先教えて?」
透子「え?」
透子「あ、うん……」
戸惑う透子だが、隼斗が「だめ?」と可愛らしく首を傾げてくるので、言われるがまま頷いてしまう。
そのままスマホを取り出し、おずおずと連絡先を交換する。
その後も「教科書見せてくれる?」「課題の答えわかった?」「次の教室一緒に行こうよ」など、次々と話しかけられ、そのたびに赤面してしまう透子。
透子、ふと「俺、本気でいくから」と言っていた昨日の隼斗を思い出してしまい、ますますドキドキと胸が高鳴ってしまう。
ぱたぱたと火照った顔を仰いでいると、
隼斗「大丈夫?具合悪い?」
覗き込んできた隼斗が、透子の額に手のひらを当てる。自分と比べ、
隼斗「熱はなさそうだけど……」
首を傾げている。
透子「だ、大丈夫!大丈夫だから!」
隼斗「そう?無理しないで」
透子「う、うん。ていうか、どうしたの、昼休みだけど……」
隼斗「お昼、一緒に学食行かない?と思って」
透子「え?」
隼斗「もしかして誰かと約束してる?」
透子「特にないけど……」
隼斗「よかった」
ほっと安堵の息を吐いた隼斗がにっこり笑って、「じゃあ行こ」と透子を先導する。その後を追いかけながら、(こんなんじゃ、心臓がもたないよ……)と内心頭を抱える透子だった。
○透子のバイト先のカフェ 夕方(授業後)
木の温もりを感じさせるおしゃれなカフェ。ピークは過ぎて店内は落ち着いている。
ホールで働いている透子は、シャツ+黒パンツにエプロンという店員姿。
黙々とトレイを拭きながら、考えてしまうのは隼斗のこと。
学食に行ったあとの回想。
隼斗は透子が奥に座れるように誘導してくれたり、椅子を素早く引いてくれたり、食器を二人分下げてくれたり……ととにかく至れり尽くせり。しかもスマートで、その度に思わず見惚れてしまった。
透子(まさか本当に私のこと――)
そこまで考えて、透子は慌ててそれを打ち払う。
透子(相手は芸能人。そんなわけないんだから、油断しないように、私!)
そう言い聞かせる。
退店していく客に「ありがとうございました〜」と声をかけ、テーブルを拭いていると、また新しい客が入店してくる。扉が開いたときのドアベルの音に、そちらに顔を向ける。
その瞬間、(あれ?)と頭の中で何かが引っ掛かる。
入ってきた客は知らない人だけど、この光景に見覚えがある。
はっと気づく透子。
透子(もしかして、ここに来たことがある――?)
知らぬ客の姿と隼斗の姿が重なる。
○回想
透子「いらっしゃいませー。お好きなお席へどうぞ」
そう言った透子と隼斗の目が会う。
透子(うわ、綺麗な人……!)
じっと見つめる透子に、隼斗が少しだけ険しい顔をする。
透子、我に返り、目をそらす。
透子(いけない。じろじろ見たら失礼よね……)
テーブルの片付けを再開するうちに、隼斗は埋まっているカウンター席を見つめてから、空いている別の席に座った。
回想終わり。
透子(でも別に、常連さんってわけでもなかったし……)
首を傾げながらも、頭の中は隼斗でいっぱいの透子。
透子はベッドに寝転んで今日の出来事を思い返している。
回想。
隼斗「ライバルもわかったことだし、俺、本気でいくから」
透子「え?」
驚きで目を見開く透子。そんな透子を真っ直ぐに真剣な表情でみつめる隼斗。透子は未だ固まったまま。そんな透子を見て、隼斗は表情を和らげる。
隼斗「帰ろうか、送ってくよ」
透子「う、うん」
透子(本気って……。まさか。ね――)
それでも気になって、隼斗のことをスマホで調べてみる。
エーテル時代の隼斗の様子に合わせて、説明文を読む。
南隼斗。21歳。15歳で男性アイドルグループエーテルの一員としてデビュー。20歳でグループが方向性の違いにより解散するまで、中心メンバーとして活躍。エーテル内でも女性人気は一二を争う。グループ解散後は、まずは大学を卒業することと、お芝居に力を入れていきたいと語っている――。
透子(いやいや、こんなすごい人が私なんて相手にするわけないよ)
○翌日 大学の教室 授業前
隼斗「おはよ、透子」
透子「!?」
突然の名前呼びに、透子本人もまわりの友人たちも驚く。
ただ隼斗は気にするそぶりもない。
隼斗「俺、正式に同じサークルに入ることにしたよ。よろしくね」
透子「い、忙しいんじゃないの……?」
隼斗「参加できないこともあるかもしれないけど、ぜひって言ってもらえたから甘えちゃった。だから透子、よろしくね」
透子「え……?」
隼斗「色々教えてよ。あ、連絡先教えて?」
透子「え?」
透子「あ、うん……」
戸惑う透子だが、隼斗が「だめ?」と可愛らしく首を傾げてくるので、言われるがまま頷いてしまう。
そのままスマホを取り出し、おずおずと連絡先を交換する。
その後も「教科書見せてくれる?」「課題の答えわかった?」「次の教室一緒に行こうよ」など、次々と話しかけられ、そのたびに赤面してしまう透子。
透子、ふと「俺、本気でいくから」と言っていた昨日の隼斗を思い出してしまい、ますますドキドキと胸が高鳴ってしまう。
ぱたぱたと火照った顔を仰いでいると、
隼斗「大丈夫?具合悪い?」
覗き込んできた隼斗が、透子の額に手のひらを当てる。自分と比べ、
隼斗「熱はなさそうだけど……」
首を傾げている。
透子「だ、大丈夫!大丈夫だから!」
隼斗「そう?無理しないで」
透子「う、うん。ていうか、どうしたの、昼休みだけど……」
隼斗「お昼、一緒に学食行かない?と思って」
透子「え?」
隼斗「もしかして誰かと約束してる?」
透子「特にないけど……」
隼斗「よかった」
ほっと安堵の息を吐いた隼斗がにっこり笑って、「じゃあ行こ」と透子を先導する。その後を追いかけながら、(こんなんじゃ、心臓がもたないよ……)と内心頭を抱える透子だった。
○透子のバイト先のカフェ 夕方(授業後)
木の温もりを感じさせるおしゃれなカフェ。ピークは過ぎて店内は落ち着いている。
ホールで働いている透子は、シャツ+黒パンツにエプロンという店員姿。
黙々とトレイを拭きながら、考えてしまうのは隼斗のこと。
学食に行ったあとの回想。
隼斗は透子が奥に座れるように誘導してくれたり、椅子を素早く引いてくれたり、食器を二人分下げてくれたり……ととにかく至れり尽くせり。しかもスマートで、その度に思わず見惚れてしまった。
透子(まさか本当に私のこと――)
そこまで考えて、透子は慌ててそれを打ち払う。
透子(相手は芸能人。そんなわけないんだから、油断しないように、私!)
そう言い聞かせる。
退店していく客に「ありがとうございました〜」と声をかけ、テーブルを拭いていると、また新しい客が入店してくる。扉が開いたときのドアベルの音に、そちらに顔を向ける。
その瞬間、(あれ?)と頭の中で何かが引っ掛かる。
入ってきた客は知らない人だけど、この光景に見覚えがある。
はっと気づく透子。
透子(もしかして、ここに来たことがある――?)
知らぬ客の姿と隼斗の姿が重なる。
○回想
透子「いらっしゃいませー。お好きなお席へどうぞ」
そう言った透子と隼斗の目が会う。
透子(うわ、綺麗な人……!)
じっと見つめる透子に、隼斗が少しだけ険しい顔をする。
透子、我に返り、目をそらす。
透子(いけない。じろじろ見たら失礼よね……)
テーブルの片付けを再開するうちに、隼斗は埋まっているカウンター席を見つめてから、空いている別の席に座った。
回想終わり。
透子(でも別に、常連さんってわけでもなかったし……)
首を傾げながらも、頭の中は隼斗でいっぱいの透子。



