Bird Cage


五年前まで、私は当時第二営業部の鳥飼と付き合っていた。勿論、そのときまだ鳥飼は結婚してなかった。付き合いは入社して割とすぐに始まった。
彼は人間的魅力は勿論、隣に並んで歩くだけでも羨望の的だった。彼から告白されたときは有頂天だった。
25と言う曖昧な年齢のとき恋人もいない寂しい人生に光が差したと思った。
けれどそれは思い違いに過ぎず、イミテーションにでしかなかった。

その日私は休日で一人街でブラブラショッピングをしていた。特段目的があったわけじゃない。
鳥飼を見たのはそのときだった。
何の疑いもなく彼に「偶然!」と声を掛けたかったけれど、彼は違う女の子と手を繋いで私と目が合ったにも関わらず目を逸らしてその見知らぬ女とすれ違った。

そのとき悟ったのだ。
ああ、私は”二番目”だったのだ、と。

その後鳥飼には会社で会った時屋上の庭園で謝られたが、到底許せることではなかった。

『あの女ストーカーみたいなことしてくるから、こっちも断れなくて』
『嫉妬心が激しいんだ』
と言い訳のオンパレード。

ストーカーの割には随分親し気だったじゃない。それにそういう被害に遭っていたのならまず私に相談してほしかった。
当然それまで築き上げていた信頼関係はあっという間に崩れていき、私から別れを切り出した。

以来、鳥飼には関わりたくないのに何故か向こうが私に纏わりついてくる。寄りでも戻したいのだろうか。それとも女切れ?あいつに未練など残っていることなど最初から期待していなかった。冷めている、と言ってしまえばそこまでだけど私の中で何かが壊れたのは確か。いっそ鳥かごごと壊して欲しかった。そしたら私は飛び立てたのに。なのにあいつは私の片翼を折っただけで鳥かごを壊してはくれなかった。

その後数年経って鳥飼は結婚した。相手は当時一緒に歩いていた子かどうかは分からない。別に知りたいとも思わないし。
だから小鳥遊部長にもし私の他にそう言う女が居たとしても失望しないだろう。

でも―――小鳥遊部長は仕事のときと違っていつも私を抱くとき、とても優しい。

言葉は相変わらず少な目だけど、手や唇がとても優しいのだ。まるでいつも宝物を壊さないような手つきに
少しだけ己惚れてもいいのかな。